7月16日、大田区総合体育館にて『QUINTET.2』が開催された。
大会では、新たな取り組みとして試合前に中井祐樹審判委員長による技術解説。これまでの大会で見られた「サドルロック」、「ジャパニーズネクタイ」といった技術を紹介していく。技の実演は6.9『QUINTET FIGHT NIGHT』で対戦した岩崎正寛と矢野卓見だ。
さらに「ラバーガード」の解説では、このテクニックを開発したエディ・ブラボー本人が登場するという豪華版。こうした“技術の面白さ”も格闘技には欠かせない要素だ。
1回戦第1試合では、桜庭和志率いるTEAM ReebokとタイのMMAメガジムが送り込んできたTEAM Tiger Muay Thaiが対戦。ここで“抜き試合”の醍醐味が見られることになった。
ユン・ドンシクvsクリストフ・ヴァンダイクの先鋒戦、所英男vsタレック・スレイマンの次鋒対決はドロー。続いて登場したのがハイサム・リダだ。
ハイサムは今大会でQUINTET初参戦。桜庭のスカウトを受けての出場に燃えるKARPE DIEMの重量級エースだ。いつか出たいと思っていたという憧れの舞台に上がったハイサムは、Tiger Muay Thaiの中堅バイキング・ウォンをアンクルロックで秒殺。続いて副将アレックス・シルドに開始34秒でヒザ十字固めを極める。そして大将のスチュアート・クーパーにはリアネイキッド・チョークで一本勝ち。驚異の3人抜きでチームの勝利を決めた。TEAM Reebokは桜庭、中村大介を温存できたことになる。
もう一つの1回戦では、ラバーガードやツイスターなど数々の寝技テクニックを開発してきたエディ・ブラボーのジムから選抜されたTEAM 10th PlanetがTEAM VAGABONDと対戦。VAGABONDはその名の通り、石井慧が世界中を放浪し、練習する中で出会った選手たちを集結させたチームだ。
この試合も先鋒のPJバーチvsクリシェック・スチョラスキー、次鋒のリッチー・マルティネスvsジョアオ・アシスがドローに。しかしリッチーのラバーガードからの攻撃など見応えのある攻防が続いた。
石井は中堅で登場、エディ・ブラボー主催大会EBIのチャンピオンであるジオ・マルティネスとの対戦が実現する。この試合、40kgもの体重さがあり、試合時間は規定により4分。短時間でフィニッシュするため攻めまくる石井の迫力は凄まじいものだったが、それをしのぎ切ってしまったジオのタフさもさすがとしか言いようがない。この試合もドローでアミール・アラムvsアンドレイ・カズショナクの副将戦へ。
ここでQUINTET史上に残るであろう鮮烈なサブミッションが決まった。試合開始早々に足関節を取りにいったカズショナクは、さらにスタンドからビクトル投げの要領で回転しつつ足を取り、一瞬でニーバー(ヒザ十字固め)が完成。アラムがしばらく立ち上がれないほどの強烈な“一撃”だった。
カズショナクはサンボの世界選手権で優勝したこともある選手。グラップリングで「サンボの技」を極めるという異種格闘技戦的な魅力も含め、インパクト絶大な勝利だった。
しかし、サブミッションを極めるには力も使うため、連続で勝ち抜くのは簡単なことではない。カズショナクは後がなくなった10thの大将アダム・サックノフに一本負け。今度はサックノフが足関節を切り返し、バックを奪ってリアネイキッドチョークに持っていった。
サックノフvsミカエル・ドピッツの大将戦は4分ドロー。「指導」の数が同数だったため旗判定3-0で10thの決勝進出が決まった。とはいえ石井が「自分の生徒のような選手」と言い「チャンスを与えたい」と出場させたドピッツもポテンシャルの高さを感じさせた。
そして決勝。初優勝を期す桜庭、所、中村にグラップリングのスペシャリスト集団10thが立ちはだかるという構図だ。
先鋒戦はPJバーチがバックを奪い、中村が切り返しのアームロックを狙うという“らしい”展開もありつつドロー。続く次鋒戦で、桜庭がこの日の初戦を迎える。4月の旗揚げ大会では2試合ドローだった桜庭だけに、今回は「まず1勝」を掲げてもいた。
しかし、リッチーはガードポジションに巧みに引き込むとケサ固めで抑え込んできた桜庭の背後に回りつつツイスターのセッティングへ。そこからレッグスプレッドを仕掛けていくリッチー。いわゆる「はずかし固め」を桜庭に極めようというレアなシーンだ。
これを脱出した桜庭はヒザ固めタイトに入っていたように見えたが、これを潰されると今度は自分の片方の手が使えない状態に。そこからリッチーは上半身を固め、腕を狙いながら最後はダースチョーク。レジェンド・桜庭をタップさせてみせた。
しかし、ここでReebokは中堅のハイサムがすかさずアームバーで展開を五分に戻す。続いては10thのエース格ジオとの中堅戦だ。この試合、体重差が30kgもあるだけに“ハイサムが極めるか、ジオが逃げ切るか”の展開になるかと思われたが……。
序盤からアグレッシブに動いたジオが長身のハイサムをがぶってグラウンドに持ち込み、鮮やかに回転してギロチンチョーク。相手の腕を抱えないノーアーム・ギロチンだ。これで再びリードした10th。ジオは所と引き分けて出番を終え、副将のアラムに勝負を託す。
Reebokからは大将のユンが登場。負けるか、引き分けでもチームの敗退が決まる。アラムは1回戦でカズショナクにヒザ十字を極められ負傷していたはずなのだが、しっかりと“仕事”をしてみせた。腕を取りながらバックに回り、最後はリアネイキッドチョーク。ユンをタップさせ、1回戦で悔しい負けを味わったアラムがチームの優勝を決めた形だ。
試合後、10thの選手たちにメダルを授与した桜庭は「やっぱり寝技だけでも面白いですね」。そして「次回は絶対優勝します」と誓った。
10th Planetというグラップリング最先端、最前線の選手たちが優勝し、なおかつサンビストも輝いた今大会。QUINTETは世界観をさらに広げたと言っていい。そして9月のアマチュア大会を挟み、いよいよ海外に打って出ることになる。