4月11日、両国国技館にて『QUINTET.1』が開催された。
桜庭和志が手がけるグラップリング大会である『QUINTET』は、団体戦(5人制)・抜き試合の4チームによるトーナメント。独自のルールに加え豪華メンバーも格闘技ファンの話題となっていた。
闘いの舞台はリングでもケージでもなくレスリングマット。史上初の試みだけに、何が起こるか誰にも分からない中で、まずは桜庭率いるHALEO Drema Teamと石井慧を中心としたJUDO Dream Teamが対戦した。
先鋒戦の中村大介vs小見川道大、次鋒戦の桜庭vs出花崇太郎と、出だしから2試合連続で時間切れ引き分けに。やや観客のフラストレーションがたまりかけたところで、HALEOチームの中堅、所英男がキム・ヒョンジュに腕十字で秒殺一本勝利。ここで一気に会場の熱気が上昇した。
続く所vsユン・ドンシクはエゼキエル・チョークでユンが勝利し、星を五分に戻す。しかし今度はHALEOチームの副将マルコス・ソウザが腕十字で一本勝ち。団体戦らしい“抜き合い”の展開になった。
JUDOチームは大将・石井を残すのみ。引き分けでもHALEOチームの勝利が決まる。しかもソウザvs石井は体重差が20kg以上あるため、試合時間が通常の半分、4分となる。凄まじい勢いで攻めていった石井だが、柔術の強豪であるソウザはタイムアップまで守りきり、引き分けに。ここでJUDOチームは全員脱落、HALEOチームの決勝進出が決まった。体格で不利な選手の引き分けがチームの勝利にとって意味を持つ、団体戦・抜き試合ならではの一戦だった。
もう一つの1回戦では、グラップリング、柔術のスペシャリストを揃えたPOLARIS Dream TeamがSAMBO Drema Teamに圧勝してみせた。
先鋒で登場したクレイグ・ジョーンズがミンダウガス・ベルツビカスを得意の足関節技で攻め、ヒザ十字で一本勝ち。続くセルゲイ・グレチコ戦は引き分けとなったが、リードをキープして次鋒のマーチン・ヘルドにバトンタッチする。
このヘルドもまた足関節技の名手。今大会はヒールフックが禁止だが「それなら別の技を使えばいいだけ」と中堅ビクトル・トマセビッチにヒザ十字固めで勝利。さらに副将のテオドラス・オークストリスとの試合ではハーフガードからスイープしながらヒザの関節を極めてタップさせる。ヘルドはそのままSAMBOチームの大将であるマリウス・ザロムスキーとも引き分け。HALEOチームは3人残しての勝利となった。まさに余力充分と言っていい。
そして決勝戦。1回戦で試合がなかった選手を優先させるルールのため、HALEOチームは自動的にジョシュ・バーネットが先鋒に。「ジョシュ先鋒」が分かっていたため、POLARISチームとしては戦略が立てやすかったという。
POLARISチームは先鋒でグレゴー・グレイシーをぶつけ、体重差のため4分となった試合時間をしのぎきってジョシュを“消す”ことに成功。試合後のジョシュは「グレゴーレベルの選手に4分で勝つのは難しい」と語った。
そこからPOLARISチームは次鋒のダン・ストラウスが中村をリアネイキッドチョーク、所をギロチンチョークで下し、大量リード。さらにストラウスは「自分にとってのアイドル」という桜庭と対戦し、疲労もありながら引き分けに持ち込む。
この時点でHALEOチームは大将のマルコス・ソウザのみ。POLARISは3人を残した状態だ。ソウザと中堅・宇野薫の試合は序盤、ソウザの目に指が入るアクシデントがあったものの、再開するとソウザがタックル、そして腕十字と速攻を仕掛けて一本。優勝への望みをつなぐ。
だが、ここで再び登場したジョーンズが得意パターンである下から足をとってのヒザ十字でソウザを秒殺。1回戦、決勝とも圧倒的と言っていい強さを発揮し、POLARIS Dream Teamが優勝を果たした。
表彰式では、主催者として桜庭がハンドメイドのメダルをPOLARISチームの選手たちに授与。「自分で自分たちに渡そうと思ってたんですけど」と苦笑した桜庭だったが、「また平日になるかもしれないですけど」と言いながらも次回大会の開催にも意欲を見せた。
ルールについては「微妙な調整」が必要と語った桜庭だが「今日は今日で、初っ端としては面白くなったと思います。チームでやると違いますね。楽しかったり悔しかったりも」という総括コメントも。桜庭の勝利はなかったが、プロデュース大会という形で新たな“桜庭ワールド”が始まったと言えるだろう。ちなみに入場者数は主催者発表で4039人だった。
(リポート/格闘技ライター・橋本宗洋)