4月7日、アリーナ立川立飛にて『QUINTET FIGHT NIGHT 3 in TOKYO』が開催された。
これまで同様の団体戦・抜き試合だが、今回は初めて女子トーナメントを実施。1チーム5人の合計体重280kg以下というレギュレーションで、国内外から多彩な顔ぶれが揃った。
桜庭和志の主催者挨拶に続いて始まった1回戦第1試合は、男子トーナメントで優勝しているアメリカの強豪集団、エディ・ブラボー率いるTEAM 10th Planet。先鋒:リズ・カムーシュ、次鋒:グレース・ガンドラム、中堅:エルヴァイラ・カルピネン、副将:ライラ・スマジャ-クルス、大将:ファビアーナ・ジョージという布陣。このチームと女子MMAイベントDEEP JEWELSの精鋭が顔を揃えたTEAM DEEP JEWELSが対戦した。先鋒:KINGレイナ、次鋒:青野ひかる、中堅:奈部ゆかり、副将:前澤智、大将:富松恵美というオーダーだ。
先鋒戦、UFCにも参戦したリズとRIZINファイターでもあるレイナのマッチアップは、スタンドでもグラウンドでも一進一退の中、レイナの投げを切り返してリズがバックからチョークを狙っていく。しかしレイナもしのぎ切ってドローに(両者指導1)。次鋒同士の対戦はグレースが下からアグレッシブにアタック。腕十字、ツイスターにもトライしたが時間切れ(両者指導2)。
中堅戦はカルピネンvs奈部。ここはカルピネンがシッティングから足に絡みつき、アンクルロックで一本勝ち。試合開始25秒の秒殺劇だった。カルピネンvsJEWELS副将・前澤は体重差が7kg以上あるため試合時間4分。しかしここもカルピネンがラバーガードから三角絞め、腕十字と鮮やかな動きでタップを奪う。最後の砦となった富松とカルピネンの対戦も4分、なおかつ富松は勝利が絶対条件となる。そしてここでもカルピネンの攻撃力が炸裂。序盤にバックを奪うと攻め続け、試合終了間際にチョークで一本。カルピネンの3人抜きにより、10th Planetが2人を温存して決勝進出を決めた。
もう一つの1回戦も注目の対戦。前大会でワンマッチデビューを飾った柔術世界王者・湯浅麗歌子のアピールを受け、山本美憂がレスリング出身の選手を中心に集めたTEAM Sun Chlorellaでの参戦となった。メンバーは先鋒:池本美憂、次鋒:杉本恵、中堅:長野美香、副将:サラ・マクマン、大将:山本。対するは湯浅率いるTEAM BJJ KUNOICHIだ。こちらは先鋒:杉内由紀、次鋒:澤田明子、中堅:湯浅、副将:市川奈々美、そして大将に越後伊織を据えた。
先鋒の池本はアマチュアQUINTET九州大会での活躍で話題となった中学3年生だが、杉内がキャリアの差を見せつけ、58秒で腕十字による一本勝ち。杉内は次鋒の杉本にも腕十字を極める。タイムは41秒。杉内と中堅・長野の対戦も秒殺。49秒、杉内が腕ひしぎ三角固めで一本勝ちし、これで3人抜きに。杉内vsマクマンは体重差のため4分。マクマンが組み付いた瞬間にがぶり、そこからギロチンチョークで一本(26秒)。BJJ KUNOICHI次鋒は澤田。これも4分の試合となり、マクマンがタックルからサイドポジション、肩固めと圧倒。1分20秒での決着に。
そしてここで湯浅が登場。マクマンへの指導からバックを取ると腕十字へ。体格差を覆す見事な一本勝ちとなり、ここで大将・山本との対戦が実現することに。引き込んでガードポジションからアタックする湯浅に山本も対応。しかし守勢の山本に指導が入り、湯浅がバックへ。脱出した山本だが湯浅はすかさず腕十字。これも山本はディフェンス。湯浅はその後も攻め続け、最後は腕十字でタップを奪った。この勝利でBJJ KUNOICHIが決勝進出。こちらも2人残りでの勝利となった。
ここで前回同様に桜庭と、審判員を務める美木航のエキシビションマッチ。足を極めてタップさせて桜庭だがエキシビションのため試合続行、バックからの攻撃も桜庭がディフェンスし、タイムアップに。5月に修斗の試合を控えた美木に「頑張ってください」とエールを送った。
今大会ではシングルマッチ(ワンマッチ)も2試合。柔道出身で修斗でも活躍する出花崇太郎はホブソン・タンノと対戦。下から攻めていくタンノに、出花は立った体勢から一気に腕十字。さらに出花が攻めるとタンノに指導が入る。タンノも三角絞めで反撃したが、残り1分を切ったところで出花が腕十字を極め、7分28秒での一本勝ちとなった。団体戦で優勝経験のある世羅智茂は渡部修斗と対戦。上からの渡部、下からの世羅ともに妥協せず。お互いなかなか攻め込めない展開に。そんな中、世羅がギロチンから三角へ。粘る渡部からタップを奪い、世羅が勝利を収めた。
10th PlanetとBJJ KUNOICHI、組み技スペシャリスト同士の決勝戦は、ルールにより1回戦で試合のなかった選手から登場。まずは先鋒戦でライラと越後が対戦。終盤、ライラがバック、腕十字と攻め込んだもののドローに。次鋒戦はファビアーナと市川。お互い指導が一つ入ったがアグレッシブな展開となり、市川が肩固め、アメリカーナなど多彩な攻撃を見せる。しかしこの試合も決まらず引き分けに。ここで中堅として1回戦3人抜きのカルピネンと杉内が対戦。この試合は4分。序盤、足を取りにいった杉内に対しカルピネンはサイドポジション。マウントに移行すると肩固めへ。しかし杉内は粘りに粘って引き分けに持ち込んでみせる。
グレースと湯浅の副将戦は湯浅が三角絞めに捉えたところから主導権を握り続けるが、グレースも対抗して両者に指導2。後がない状態で攻防はさらに白熱していったが、やはり決着つかず。大会ベストバウトともい言える闘いの末、引き分けに。
そしてリズと澤田の大将戦は4分。リズが序盤のアタックでエゼキエルチョークを仕掛け、そこから優位なポジションを保ち続ける。澤田はタイムアップまでディフェンスし、引き分け。チーム全体の指導も同数となり、決着は大将戦の旗判定に。これはリズが終始、圧倒しており判定3-0。10th Planetが男子に続いて優勝を果たした。
「かなり接戦で団体戦としてはいい勝負でした。男子も優勝してるし10th Planetは強い。僕も入れてください(笑)」と表彰式の桜庭。「女子大会なので」とハート型のメダルを選手たちに授与した。
試合を終えた湯浅はマット上でもインタビュースペースでも涙。負けた悔しさだけでなくチームのメンバーへの感謝もあったようだ。桜庭はプロデューサーとして女子大会の継続開催にゴーサインを出しており、この大会で生まれたドラマの続きを望むファンも多いことだろう。
(リポート/格闘技ライター・橋本宗洋)