QUINTET創設2年目となる2019年初の大会が、2月3日に開催された。会場は初使用となるアリーナ立川立飛。今回の闘いはチーム総体重430kgの日本トーナメントだ。
1回戦第1試合で対戦したのは小見川道大率いるTEAM NEO JUDOと、初参戦・高阪剛のTEAM U-JAPAN。
先鋒はNEO JUDOが出花崇太郎、U-JAPANがミノワマン。異色対決は開始直後に出花が飛びつき十字で一本勝ち。わずか12秒で勝利を決めた。U-JAPAN次峰は所英男。序盤から所が三角絞めを見せるなど、お互いアグレッシブに極めを狙う好勝負となった。出花に指導が入ったものの、最後はマウントポジションから出花がエゼキエルチョークで絞め落とし、出花が2人抜き。
ここで中堅として高阪が登場。体重差があるため4分の試合となる。前半、両者に指導が入ったこの試合、出花がオモプラッタから十字と見せ場を作り、終盤は高阪の攻撃をしのいでドロー。出花はチームに大量リードをもたらして次峰のベテラン・吉田善行に交代。U-JAPANの副将には中村大介が登場した。この試合、吉田に指導があったがドロー。
続いてNEO JUDO中堅の松本光史とU-JAPANの大将・横井宏考が対戦。序盤からがぶり、バックと攻め込んでいった横井に対し、松本も足関節技で反撃。4分の試合時間で決着がつかず引き分けとなり、2人残りでTEAM NEO JUDOの勝利に。
もう一つの1回戦は強豪柔術アカデミー・CARPE DIEM対TEAM SOLDIER。先鋒戦のレダ・メブトッシュvsセルジオ・リオス・ダ・シウバは終盤にシウバが腕十字などで攻めていったがドロー(両者に指導)。次峰戦、デヴィット・ガルモvs関根“シュレック”秀樹は関根が豪快な投げを見せたが、ガルモも真っ向から対抗。ガルモが腕を取りにいく場面も。終盤には足関節にもトライ、軽いガルモが攻めの姿勢を貫き、4分終了でこれも引き分け。中堅戦のハイサム・リダvsデクラン・ムーディーは開始早々、ハイサムがアンクルホールドからヒザ十字に移行して鮮やかな一本(24秒)。ここでCARPE DIEMがリードを奪う。
TEAM SOLDIERは副将のイゴール“ファットニンジャ”タナベが登場。両者に指導が2つずつ出せれたところで一気にアグレッシブな展開になったが、それでも攻めあぐねてさらに指導が入り、両者失格に。
CARPE DIEMは副将の山田崇太郎、TEAM SOLDIERは大将の中村勇太が登場。昨年のアマチュア大会で5人抜きを決めた山田はマウントからギロチンチョークで快勝。同時にチームの勝利も決めた。
1回戦2試合が終わったところで桜庭和志が登場。ワンマッチのエキシビションだ。「仕込んできました」というその対戦相手は、副審席にいた美木航。ワイシャツを脱がされた美木はラッシュガード着用で準備万端の仕込まれっぷりだった。「流行りの一本あり」ルールのエキシビションは、頭髪部分の塗布物でいきなり美木に指導。さらに桜庭がアームロック(ダブルリストロック)でタップを奪う。しかし「エキシビションのため公式記録とはなりません」のアナウンス。そして試合続行も決定。桜庭は飛行機投げからバック、十字と攻めまくり、変形の腕十字でも一本。タップ後も離さなかった桜庭に美木が反撃してまたも続行。美木はバックから十字を仕掛けるが桜庭はアキレス腱固め。ここで4分タイムアップとなった。桜庭はエキシ後もマイクを握り「今年50(歳)なんですけど、これきついです」と苦笑。
続いてはQUINTET初の女子スペシャルシングルマッチ。柔術世界選手権4連覇の湯浅麗歌子がアジア選手権3連覇の新鋭・石黒遥希と対戦。湯浅はアマチュア大会にもエントリーしていたが、出番なしで終わったため今回がQUINTET初試合だ。
試合が始まると、組み手争いから湯浅が引き込んで足を取っていく。そこから上になると、ハーフからマウント。逃れようとする相手の動きに合わせてバックへ。パスしてきた石黒には足を取って上に。ハーフから一気にバックを奪いにいく場面も。緊張から「最初はふわふわしていた」という湯浅だが、流れるような動きから、最後は腕十字で一本。実力を見せつけての勝利だった。
試合後、マイクを渡された湯浅は「今日は女子で初めてのQUINTET、勝てて安心しています。4月7日に女子の大会が、この会場で開催されることになりました。女子でも柔道、レスリング、MMAのチーム、ぜひ出てほしいです。今日、解説で憧れの山本美憂さんがいらしてるんですけど、レスリングチームで出てほしいです」。
このアピールに美憂がマットに上がると、湯浅は柔術のチームメイトもマットに呼ぶ。美憂は「ぜひ、強いレスラーを集めて参加できたら。自分にとってもグラップリングを強化するいい機会です」。さらに美憂は湯浅に「ぜひMMAにも。交換条件で」。「出たい気持ちはあります」と湯浅。女子QUINTET、湯浅の今後ともども注目したい。
NEO JUDOとCARPE DIEMの決勝戦。先鋒戦は小見川vsトーマス・ミッツ。シッティングから捕まえにいくミッツは肩固め。長時間トライするもタップは奪えず。その後もミッツが攻めていったがドローに(両者指導2)。次峰戦は小澤幸康vsレダ。引き込みからバックを奪ったレダだがチョークは極まらず。その後も足関節、鮮やかなリバーサル、バックからの攻撃を見せたレダ。タイムアップ間際には足首を取ったが、この試合もドローに(両者指導1)。中堅戦に登場したのはNEO JUDOから松本、CARPE DIEMはガルモ。開始直後、タックルにいった松本にガルモはフロントチョーク。さらに攻め続け十字、バック。しかし松本はバックを取られた体勢からフックされた足を極めて見事な一本。
CARPE DIEMは副将・山田がマットへ。ここで山田がギロチンからバック、4の字フックから強烈なネッククランクを極めて副将同士の対戦へ。NEO JUDO副将は吉田。開始直後、山田は引き込んでオモプラータ。立ち上がった吉田のバックを取る。さらに山田はマウント、サイドと優位なポジション。最後はまたもネッククランク。チームの勝ち星を逆転させる。NEO JUDO最後の一人、大将は出花。山田は決勝戦3試合目となるが動きは落ちず。ポジションを変えながらキープ。しかし動きを欠いたため山田に指導が入る。それでも試合は山田が攻勢。オモプラータで腕を固め、そこからリアネイキッドチョークでタップを奪った。山田は驚異の3人抜き。ポイントゲッターとしての圧倒的な力を発揮し、チームを優勝に導いた。メンバーは違うものの、CARPE DIEMは昨年6月の有明大会に続いての優勝だ。
表彰式、桜庭からのメダル授与は「発注したんですけど間に合ってないんですよ」ということで「エアメダル」授与に。閉会式では節分ということで豆まきも。
大会MVPを選ぶとすれば、やはり山田だろう。一本の魅力、さらに3人抜きと、QUINTETの醍醐味を見せたと言っていい。試合後の山田は、決勝戦の大将との試合でもドローではなく一本を狙いにいったことについて「それで負けたとしても、相手を疲れさせようという考えでした」と語っている。なぜなら「チームが負けたら意味がないので」。ポイントゲッターが個人の力を発揮したようでいて、そこには団体戦としての闘い方があったのだ。
次回、4.7立川大会では初の女子大会が開催。RIZINの榊原信行実行委員長は浅倉カンナ、村田夏南子の名前も出し、「今年のRIZINは変なことをやりたい」と桜庭vsギャビ・ガルシアのエキシビションを逆オファー。男子も含め、QUINTETに積極的に関わっていくという。女子、海外進出、さらにはRIZINとの関係。QUINTETの世界は、これからますます大きくなっていきそうだ。
(リポート/格闘技ライター・橋本宗洋)